食事の見直しで実現!
80歳でも入れ歯いらず

生活習慣が 変われば 歯も 変わる

健康に欠かせないのは 正しい食生活ですが、 そこで重要になってくるのが、歯です。 今年から、厚生労働省は健康増進法にのっとり、 健康で長生きできるよう生活習慣を改善することを呼びかけています。 とくに興味深いのは、生活習慣を改善する注意項目には、歯の健康も含まれていることです。 すでに1981年にWHOは8020運動を提唱しています。 これは、32本の永久歯のうち、80歳で20本の自前の歯を維持しようというもの。 ということは、80歳で20本の自前の歯を持っている人が少ないことを示しています。 じつは、歯が抜けてしまうのも生活習慣病のひとつです。 正しい食生活を続ければ自分の歯は守れます。 (文と作図・木村寿宏)

ていねいに ブラッシング しているのに 虫歯ができるのは なぜ?

虫歯や歯周病はブラッシングにより歯垢を取り除いて、口を清潔に保てば防げるというのが大方の意見となっています。歯医者さんに行っても必ずブラッシングの指導がありますし、 普段の予防の一環としては大変意味があることです。なぜなら、歯垢が細菌の巣になっており、ブラッシングによって無くしてしまえば、口の中の細菌の数は大幅に減らすことができるから。とくに、口に残っている食べかすが歯垢の元になるので、やはり食後のブラッシングは欠かせません。 しかし歯医者さんから正しいブラッシングを教わってるのに、30代ぐらいから歯が抜け始めてしまう人が多いようです。これはいったいなぜなのでしょうか。歯垢や食べかすを除くことによる口内衛生を保つだけでは不十分なように思われます。

図、歯の残数と歯肉異常の関係

40歳代半ばになんらかの歯肉異常が認められる人のピークがあります。少し遅れて50歳を過ぎた頃から歯の残数が減ってきます。注目すべきは、60歳ごろに20本の残歯数を下回ること。まだ80歳までに20年も残っています。50歳までの歯肉異常で、歯を支える歯槽骨がぼろぼろになってしまっていることが考えられます。正しい口内ケアとともに、原因菌に負けない強いからだを保たなければなりません。

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あなどれない 歯周病

口の中には300~400種類の常在菌が存在し、虫歯を起こす細菌と歯周病を起こす細菌は別のものです。歯周病を引き起こす種類はそのうち10種類ぐらいではないかと言われています。 歯周病の怖いところはなんと言っても、歯が抜け落ちてしまうことです。歯周病菌は歯と歯ぐきの間の3ミリ程度の歯周ポケットで活発に活動します。毒素を出したり酸を産出して、歯ぐきを刺激し、はれ上がらせます。さらに、歯周ポケットを深くしていき、ますます繁殖しやすくなります。そこで歯を支える歯槽骨が溶け出し、歯がぐらつき、最悪の事態になると抜けてしまうことになるのです。歯槽骨が溶けてしまうと元のようにしっかりと歯を支えるまでには直ってはくれません。歯が浮いている感じ、ぐらついてきている、歯の根本の歯ぐきがはれて血がにじんでいる、歯石がたまっているといった症状がある場合は要注意です。 実際に起こる歯周病は菌によってそれぞれの病状を起こしますが、いずれにせよ歯の存亡に関わってきます。じつは、歯周病も虫歯も健康であれば問題のない常在菌が引き起こしているとのこと。つまり、歯周病が起こったときは、歯だけではなくからだ自身の変調にも気遣わなければならないのです。

図、歯周ポケット周辺図

歯周病になると歯槽骨が減っていき、歯周ポケットが深まっていきます。そのために歯がぐらついてきます。歯周ポケットは掃除もしにくく、細菌にとっては住み心地がよい場所となります。また、深まった歯周ポケット内で歯石がたまると大変。簡単には除去しにくい上、歯石によって歯肉が刺激されて、どんどん悪化していきます。

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口の中を清潔にして 歯周病の予防を

まずは、細菌が棲みやすい口内環境を避けましょう。食事をすると口の中に糖質が入りますので、口の中の細菌により乳酸に分解されて、口腔内が酸性になります。これは歯が溶けやすい状態です。普通は、食べ終われば唾液で口の中を洗い流せるので、しばらくすれば中性に戻り、 歯の表面では再石灰化が起こります。歯が消え去ることがないのはこのためです。 食事中から乳酸への分解が始まっており、虫歯予防の面からは、適度な時間で食事を終え、食後のブラッシングで口をきれいにすることが一番なのです。寝ている間には唾液が少なくなるので、寝る前には歯磨きで清潔にし、細菌の数を減らしておく必要があります。(図3参照) 歯周病はブラッシングでの歯垢除去で予防はできるのですが、歯周ポケット内にできてしまう歯石に対しては、歯が立ちません。これだけはお医者さんで、歯石除去をするしかありません。いずれにしろ、欠かせないことは、歯周病菌に負けない強いからだ作りです。

図、1日の口内環境のpH変化と再石灰化

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自然に近い食生活が 歯の健康を守る

図、低体重児出産と妊娠中の歯周炎の関係

歯周病の治療は歯石除去と抗生物質で細菌を弱らせる方法があります。でもこれらの治療は、まず、今のはれを引かせるというだけの対症療法です。生活自体が変わらなければ再発の恐れがあります。歯周病菌は常在菌です。つまり、どこかで感染して急に発病するというものではなく、長い間口の中で人とともに過ごしてきているのです。そのような細菌が歯周病を起こすということは、人のからだに異変が起こっているからにほかなりません。  食生活の乱れ、睡眠不足、ストレス、身の回りに溢れている化学物質、どこに行ってもあるエスカレーターが象徴的な運動不足などにより人のからだ自体が弱まってきています。それで免疫力も落ちてしまい、やがて発病に至るのです。こと高度経済成長後の日本人は、科学の発達で便利な世の中が始まり、急速に自然から離れた生活になっています。農村地域でさえ、いまやコンビニがあり、都会と変わらない生活になりつつあります。農業では、農薬や化学肥料がたっぷりと使われており、農作物からミネラルが少なくなっていることも報告されています。 興味深いことに、古代人の歯は今と違って硬く、虫歯も歯周病も見受けられません。生活はまさに自然の中にありました。現代と昔について、生活の違いを考えると食べ物が決定的に違うことに気づきます。現代食は偽りの味を出すために作られたやわらかい加工品が多く、栄養が偏ります。とくに注意したいのは、スナックなどの菓子類の多くは、からだの中のカルシウムを吸収して、体外に出してしまうとのこと。一方、自然なままの食べ物はミネラルやビタミンが豊富です。それも栄養のバランスを考えて食べたいものです。 免疫力が低下している現代人が健康な歯を守るためには生活習慣を変えなければなりません。そのために、歯周病もまた生活習慣病といわれるのです。歯を守るためには、できるだけオーガニックな作物を食べ、市販の加工食品を避け、海草や旬の野菜などミネラルやビタミンの多い生活をすることが大切です。

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COLUMN

自然治癒力の一種、 歯の再石灰化を 促すには

口の中では歯の脱灰と再石灰化が繰り返されています。 歯の表面のエナメル質はカルシウムとリン酸が固まったものです。口の中が酸性になると溶け出してきます。虫歯菌は食べたもののうち糖質を分解して乳酸に変え、口の中を酸性にします。しばらくすると歯が溶け出し、虫歯のもとができます。 が、口の中の唾液が洗ったり、中和することによって、歯の防御作用である再石灰化が起こります。唾液にはカルシウムとリン酸が含まれており、口のなかの酸性度が下がって普段通り中性になると歯の表面で再石灰化します。このメカニズムが崩れると虫歯が進行していきます。 再石灰化を促すには歯にくっつきやすい粘度の高い食べ物を減らし、 食事に歯を掃除してくれる繊維質を増やしたり、適度な食事の時間で切り上げて早めに中性に戻すといった食習慣を確立することが重要です。 つまり、だらだらと食べ続けるというのも虫歯のもとになります。また、唾液のカルシウムの量を十分なものにするために、ゴマや海草、小魚などカルシウムの多い食べ物を摂ることをおすすめします。

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歯垢は 歯周病の 根源

歯にこびりつく歯垢は虫歯菌が自ら作ったすみかです。 虫歯菌は糖質から乳酸を作るのと同時にグルカンという粘り気のある繊維状の多糖を作り出します。歯垢の75%は細菌体の重量で、1mgに1億個もの細菌が含まれるとも言われています。たしかに、歯磨きで歯垢を取り除くことは歯の健康には欠かせません。 また歯垢は虫歯だけでなく、歯周病のもとにもなっています。歯の再石灰化が起こるとき、歯垢が残っているといっしょに固めて歯石にしてしまいます。歯石自体が歯肉を刺激するだけでなく、歯垢に棲んでいた細菌の毒素や酸も一緒に固めてしまうので、歯石を取り除くまでは歯肉を刺激し、歯周組織を傷つけていきます。歯ぐきより上にできる歯石は簡単にスケーリング(歯石除去)で取れますが、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットの中にできた場合はやっかいです。深刻な場合、切開して取り除くこともあります。 何といっても、歯垢ができにくい食習慣が一番の良策です。

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噛み合わせ不良は 歯を削らなければ ならないの?

肩こり、腰痛、膝痛、頭痛を抱えている人はからだにゆがみがあるかも。 ゆがみがなければからだの左右では対称的になっていて、肩の線、腰の線が平行にまっすぐになっているはず。ゆがみは顔にも影響が出てきて、目の線、口の線、耳の線がゆがんできます。人相が変わってしまうなんてショックです。どの線にしても、ゆがみがあると痛みが出てきます。 歯の噛み合わせは全身骨格のバランスに影響します。でもそうは言っても、噛み合わせが悪いからといきなり歯を削って調整するのは問題です。骨格が正しい型になっていないと、噛み合わせの調整も間違ったものになってしまいます。整体やヨガ、運動などで骨格をほぐし、からだのゆがみがなくなって初めて噛み合わせを調整しましょう。 知っておいてほしいのは、歯を削った部分は二度と戻ってこないということです。

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