おいしく安全な水が飲みたい!

水道水の塩素は大丈夫?

昔の日本では、蛇口から出た水をそのまま飲むのが当たり前でした。 でも今、水道水の水を何の処理もしないで飲む人は ほとんどいなくなりました。 塩素のにおいが強かったり、奇妙な味がするからです。

ここでは、なぜ水道水に塩素が入れられるようになったのか、 またその害をとりのぞく方法についてお知らせします。


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なぜ水道水には
塩素を入れるようになったのですか?

水道水の消毒に使われる塩素がからだにとって問題があることがわかってきました。でも相変わらず塩素は殺菌や伝染病を防ぐ目的で使われ続けています。塩素以外に水をきれいにする方法はないのでしょうか。

水道水の塩素は、人体にとってどんな害があるのですか?

水に当たり前のように入っている塩素。これが今の日本のお水をおいしくなくしている大きな要因です。塩素は、ただ水をまずくしてしまうだけではなく、人のからだにとって問題がある働きをします。

肌に塩素が触れると、皮膚や粘膜の水分と反応して次亜塩素酸と塩酸を作り出し、強い刺激によって細胞を破壊します。 塩素が含まれる水道水で顔を洗い続けていると、「ドライスキンになって小じわが増える」と言われるのは、わずかとはいえ塩素が肌の刺激となっていることが原因と思われます。

この塩素の強い作用が殺菌に利用されているわけですが、思いもかけない働きをすることがわかってきました。水道水に含まれる塩素が、食物のビタミンを破壊してしまうのです。たとえばお茶や野菜に含まれるビタミンCは、水道水の塩素と反応してたちまち破壊されます。またお米のビタミンB1も壊されます。

アメリカのJ・M・ブライス博士は、「冠状動脈・コレステロール・塩素」という著者のなかで、塩素が血管を硬くすることによって心臓障害や脳血管障害の原因となっていると言っています。 もともと塩素ガスは、第一次世界大戦中に世界初の毒ガス兵器として登場したものです。

ブライス博士は、できるだけ早く水の塩素消毒は止めるべきだと勧告しています。 水道水に使われるのはわずかな量かもしれませんが、日本でも心臓や血管の障害による死亡率が増えていることを考えると、水道水だけが原因とは言い切れないにしろ、不安になります。

また塩素処理によって、トリハロメタンという物質ができることも問題になっています。トリハロメタンは、発ガン性や慢性的な疲労感、あるいは痴呆症につながる物忘れなどの病因になると言われています。

水道水には、いったいどれぐらいの塩素が入っているのですか?

現在、「水道法(1957年に成立)」によって、残留塩素の濃度が定められています。それによると、蛇口から出る水が、塩素を「0・1ppm以上」を保つように消毒をすることとなっています。これを守らないと法律違反になります。

ほとんどのヨーロッパ諸都市においては、残留塩素について規定があっても、排水地や配水管についてであり、蛇口にまで要求はしていません。

例外的に蛇口の水に含まれる塩素について規定しているのはスイスですが、「0・1ppm以下」という上限についての規定であり、それ以上の塩素を含むことが問題だとしているのです。だから塩素がゼロであってもかまいません。

ところが日本の場合はその逆で「0・1ppm以上」とありますから、「水道法」は、塩素が人体に害があるという認識がまったくない法律といっていいでしょう。

実際、怖いことに日本の水道水は、年々、汚染が進んでおり、そのために「0・1ppm」どころか、それをかなり上回る塩素で消毒がされています。たとえば東京のある浄水場ではときには「6・9ppm」の塩素が投入され、この水が蛇口から出てくると「0・8ppm」ほどになるとのこと。ヨーロッパの基準よりも遥かに多い塩素が日常的に使われているという現状があります。

水道水の塩素の害を少なくするにはどうしたらいいのですか?

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水道水に含まれる塩素がからだに与える影響を少なくするいくつかの方法があります。それを知って、キッチンやお風呂で使うお水をより安全なものにしてから使いましょう。

塩素の有無を調べるのに「DPD」という試薬があります。これを水道水に落とすと、さっと水がピンクから赤に反応しますが、それが塩素が含まれている証拠です。梅雨時の水が汚れやすいときになると、本当に怖いほどその黄色が濃くなります。

その赤い水にハーブを入れてみました。すると不思議・・・! すうっと赤色が消えていきました。水道水の塩素は、ビタミンやミネラルと反応して消えます。

そんな作用を使ってハーブだけではなく、いろいろなものを試してみました。その結果、レモンのスライス、お米のとぎ汁、紅茶やコーヒー、木の実などを水に入れると、塩素が消えていきます。

また塩素は熱を加えれば、蒸発して消えます。数分間、沸騰させればトリハロメタンも一緒に消えていきます。ですから塩素の害を少なくしようとするなら、水道水をそのまま飲まずにお茶やハーブティで飲むほうがいいようです

またお風呂の塩素を取り除くには、キッチンにある食材を使うのもおすすめです。ハーブバスにしたり、お米のとぎ汁を注いだり、あるいは野菜クズやお茶がらを袋に入れて湯船に入れるのもいい方法です。ちなみにハーブや野菜はオーガニックのもののほうがミネラルやビタミンが多いせいか、塩素が良く消えるようです。

塩素の害を少なくする方法だけを紹介すると、「なあんだ、そんなに簡単に塩素は消えるの」と安心してしまうかもしれません。そのリスクはあるのです。水を煮沸して塩素が消えることはあっても、清涼感を与える酸素や、からだに良く成人病の予防にもなる重炭酸ミネラルが失われます。

また野菜や穀物によって塩素が消えるといっても、体に必要なビタミンやミネラルが破壊されてしまうのです。

他の国では、どんな方法で水を浄化しているのですか?

水道水の浄水方法は二つあります。時間をかけて砂の層を通過させる「緩速濾過」と、薬品の力を使って素早く浄水する「急速濾過」です。

「緩速濾過」は、主にヨーロッパで使用されています。川から引いた水を沈殿地に入れ、泥や固形物を沈殿させてから、濾過地へと導きます。暑さ1メートルほどの砂の層をゆっくりと通過させます。浄水ができるまでに約34時間もかけます。

つまり「緩速濾過」は、自然の力に依存して浄水する方法で、砂層に棲む微生物の、生物分解による水質の浄化です。

いっぽう「急速濾過」は、19世紀のアメリカで新たに始まった方法で短時間で浄水ができるため、この方法を日本も採用しています。「急速濾過」は、原水に含まれる固形不純物をとりのぞくために、硫酸バンドやポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を入れます。次に沈殿池で固形物を沈めますが、短い時間で処理するので、細菌に対しては除去が十分とはいえません。そこで殺菌のために薬剤として塩素を入れるのです。

新たに出てきた「急速濾過」に使う問題点が明らかになるにつれ、いっぽうの「緩速濾過」のすぐれた点も見直されるようになりました。砂層に棲む微生物を活用する「緩速濾過」は、鉄、マンガン、水銀などの重金属も取除くことができたし、カビ臭や合成洗剤までとってしまうことがわかってきたのです。やはり自然を活用した浄化力は、人工的な方法よりもはるかにすぐれているようです。

これ以上、水を汚さないために
家庭から出る化学物質を少なくしましょう!

塩素だけではなく、水道水に溶け込んでいる化学物質も深刻な問題

水道水の不安は塩素だけではありません。さまざまな化学物質が川に流れ込み、年々、水汚染がひどくなっているという現実があります。水の汚染原因は、農薬、工場排水、そして私たちの家庭から出てくる生活排水に含まれています。

農薬、工場排水による水汚染

今や水道水に溶け込んでいる化学物質は、2000種類を超えていると報告されています。農地からは農薬や除草剤、工場からは重金属やトリクレンなどの有機溶剤をはじめとするさまざまな化学物質、そして意外と気づかれていないのが、家庭から流される合成洗剤で、それらが川に流れ込み、水道局の貯水池へと運ばれています。

そうした化学物質の多くに、発ガン性物質や環境ホルモンになりうるものが含まれています。

しかし現在、水道局の水質基準では、チェックすべき項目は、わずか50項目です。濁りや色、臭いなどのほか、水銀、カドミウムなどの重金属、トリハロメタン、トリクレン類などの有機溶剤、そして合成洗剤も入っています。

水汚染の原因として深刻なのは農薬や除草剤です。

6月から7月にかけて、最近はヘリコプターによる水田の除草剤散布する地域が多いようですが、この頃は水道水の分析をすると怖いほど農薬の濃度があがってくるとのこと。これらの除草剤は、ダイオキシンのような発ガン性や催奇形性のある物質を含んでいます。しかし実際のところ、水道局では農薬を除去するための方法を持っていないとのことです。

工場から出る化学物質による水汚染

工場からは、水道局で把握しきれない数の化学物質が流出しているようです。

とくに「水質基準」でも気になるのは、有機塩素化合物であるトリクロロエチレンやテトラクロロエチレン、1・1・1トリクロロエタンなど。これらは不燃性、電気絶縁性があるので、ハイテク産業では欠かせないものになっており、近年、急速に汚染が広がっています。またクリーニング屋さんでもドライクリーニングに使ったり、身近なところでは、修正用ホワイトの薄め液も1・1・1トリクロロエタンを使っています。

トリクレン類は、中毒症状としては、倦怠、めまい、視力障害、発ガン性などがあります。1982年には、カリフォルニア州のシリコンバレーでハイテク汚染があり、地下水汚染により、13人が死亡、ガン、白血病、流産、先天性異常が多発し、大問題となりました。

でもこれらの化学物質はまだまだほんの一部。毎年、何万トン以上もの化学物質は生産され、消費されている現状を見ると、このままでは水汚染がさらにひどくなっていくことが予想されます。

飲み水にも合成洗剤が入っている?!

少しでも水をきれいにするためにまず私たちにできるのは、家庭から出る化学物質を知り、それを使わないようにすることです。日本の「水質基準」のチェック項目の一番新しいものとして合成洗剤も入っています。「水質基準表」を見ると、「陰イオン界面活性剤0.2ppm」と記載されています。これは飲み水となる原水にすでに合成洗剤が入り込んでいることを認めており、浄水場ではとりきれないので、蛇口から出る水に残るのも仕方がないとしていることを意味します。またこの「0.2ppm」という基準は、安全性とはあまり関係なく、これ以上だと泡だってしまうという理由から定められた濃度です。

合成洗剤に含まれる合成界面活性剤は、環境ホルモンの疑いがあるものが多く、川や湖の生物や植物を死滅させてしまいます。そうなると川や湖は浄化力を失い、ますます汚染が進みます。また合成界面活性剤は、環境中で分解しにくいということも不安があります。

日本の合成洗剤の使用量は世界一とも言われています。汚した水は、必ずわたしたちの口に還ってきます。私たち自身もまた水汚染をしていることを自覚し、危険なものは買わない、使わないという姿勢が求められています

浄水器は、塩素だけではなく
化学物質も取除けるのですか?

今やどこの家庭にもあるようになった浄水器。でも浄水器にはどこまで水をきれいにしてくれるのでしょうか。浄水器を選ぶときのポイントについて考えてみました。

多孔質構造のものが、水をきれいにしてくれる

現在、いろいろな浄水器が出ています。活性炭、セラミック、変わったものでは珊瑚を利用したものがあります。これらは、浄水するものの構造が多孔質で、有害物質を吸着するというものです。

数年前から、マイクロフィルターや中空糸膜を使うものも多く出てきていますが、こうしたものでは、塩素や雑菌を取ることはできても、トリハロメタンやそのほかの化学物質はほとんどとることはできないというデーターが出ています。またマイクロフィルターや中空糸膜の素材は合成の化学物質なので、それが溶ける恐れもあり、かえって汚染された水を飲むことになってしまう不安もあります。

活性炭は塩素も化学物質も吸着する

浄水器を選ぶなら、やはり自然素材のもので浄化するものがいいでしょう。

データーをとると、活性炭を使った浄水器が浄化力が高いようです。活性炭を入れた浄水器の中には、塩素はもちろんのこと、トリクロロエチレンなどの有機化合物も80~90%近く取除けるという性能の高いものもあります。

ただし活性炭の粉を合成樹脂で固めた浄水器は問題があります。合成樹脂は環境ホルモンなどの不安もあるので、活性炭をそのまま使ったものがいいでしょう。そのほか外面や水が流れる部分は、できるだけプラスチックを使わないもののほうをおすすめします。プラスチックの可逆剤もまた環境ホルモンとなりうるものが多いからです。また浄化力を考えるなら、活性炭の量が多いものを選びましょう。

でもいくら高性能の浄水器があったとしても、水汚染が進めばいつか限界が来ます。水をきれいにする基本は、もとの原水をこれ以上、汚さないことであるのはいうまでもありません。そのためには、私たちひとりひとりが水汚染になるものを知り、できるだけ生活のなかで有害な化学物質を使わないオーガニックライフをしていくことが求められます。

参考文献

「水こうして飲めば心配ない」 市民のシンプルライフセミナー著 農文協