特集1食卓からの健康宣言
その10 身土不二と一物全体

身近なところで育った食べ物がいちばん

自分や祖先が生まれ育った土地に、古くからたくさん収穫されていた食べ物を、その旬の季節に、偏らないよう順番に摂る。それが生態学的に見て自然な食事である……これが「身土不二」の考え方です。

食物の育つ気候や地質により成分にも違いが生じ、その地域に特有の食品を組み合わせて料理し食べることが、その土地に住む人間にとっていちばん良いということなのです。 加えて四季のはっきりしている日本では、季節に応じて旬の食べ物があり、それも日本人の生理機能と深い関わりがあるようです。

世界中にはその土地の「郷土料理」というものがあります。しかし世界の食材や料理が国境を超えて輸入される今、食事の「地域性」はどんどん薄れていく傾向にあります。またハウス栽培などにより季節を問わずいろいろな野菜が採れるようになり、食卓から「季節感」もなくなりつつあります。真冬に熱帯の果物を食べるということがもはや当たり前になっています。遠い外国で作られた作物が簡単に食べられます。しかしよく考えてみればこれは奇妙なことではないでしょうか。

季節外れのものや外国の食べ物を味わうのも楽しいでしょう。でもそれは特別なときの楽しみにとどめたいものです。

国の耕地面積の多くが輸出作物にさかれていたり、あるひとつの作物の生産量のほとんどを特定の国が占めているということもあります。その土地の気候風土に合わない作物をお金のために作っている国も、食糧を外国から買い続けているうちに国内の農業が荒廃してしまった国もあります。「食糧を作る」という大切な役割を果たしている農業を守るためにも、地域の環境を守るためにも、自分の健康のためにも、「身土不二」を考えるべきでしょう。

まるごと食べれば栄養をあますことなく摂れる

「一物全体」とはそのとおり、食物は丸ごと食べるようにすること。たとえばお米なら精白しないものを、野菜やいもなら皮をむかずに、根も葉も食べ、魚なら頭から皮、はらわたや骨、尾まで食べるのです。全部残さず食べることが、その食品の栄養をあますことなく完全に摂れる方法だという孝え方です。普段捨ててしまいがちな皮やはらわたに案外多くの栄養素が含まれているということも知られてきており、ゴミを減らすということからも、料理法を工夫して食物はあますことなく食べたいものです。

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